【防爆無線のきほん】構造の種類と防爆記号とは?

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防爆無線機の記号って何を表してるの??

防爆無線機の製品情報をよく見ると「Ex ib llC T4 Gb」や「Ex ib lllC T110℃ Db」などと記載されている謎の記号がありますよね。

これはいわゆる防爆記号と呼ばれ、その防爆無線の防爆の構造や耐性などの性能を指している記号になります。

今回はそんな防爆記号の見方と防爆構造の種類について詳しく解説していきたいと思います。

 


そもそも防爆仕様とは?

困った顔で考えごとをするビジネスウーマン

防爆仕様は、可燃性ガスや液体の蒸気などから爆発を防止するための設計です。特に化学薬品製造などの現場では、可燃性ガス・熱発性ガス・可燃性液体の蒸気が空間に放出され、制御盤やモーターなどの電気機器からの微量な静電気によって引火し、爆発を引き起こす可能性があります。そのため、爆発を防止する構造を持つ防爆電気機器の選定が必要です。

 

1.防爆構造の種類

防爆構造には、本質安全防爆構造、耐圧防爆構造、内圧防爆構造、安全増防爆構造、非点火防爆構造などがあります。
これらの構造は、爆発性ガスに引火しないようにするためのもので、使用される場所や条件に応じて適切な防爆構造を選定する必要があります。

防爆記号で言うところの「Ex ib llC T4 Gb」の「ib」に当たる部分になります。

防爆構造の種類 記号 特徴
耐圧防爆構造 d 容器内の爆発を容器自体が耐えうるよう設計されており、外部への影響を防ぐ。
油入防爆構造 o 電気部品を油中に収めることで、火花やアークが外部の爆発性ガスに引火することを防ぐ。
内圧防爆構造 f 容器内を保護気体で加圧し、外部からの爆発性ガスの侵入を防ぐ構造。
安全増防爆構造 e 電気機器が正常時及び異常時にも火花や高温を発生させないように、安全性を高めた構造。
本質安全防爆構造 ia又はib 電気回路が特定の故障状態でも爆発性ガスに引火しないように設計された構造。
特殊防爆構造 s 標準的な防爆構造に当てはまらない特別な設計や材料を使用して、引火リスクを排除した構造。
非点火防爆構造 n 正常運転中及び特定の異常状態下でも、周囲の可燃性物質を発火させない電気機器に適用される構造。
樹脂充填防爆構造 m 電気部品を樹脂で囲むことで、火花や高温が外部に伝わるのを防ぐ構造。

1-1耐圧防爆構造 (d)

耐圧防爆構造(記号d)は、可燃性ガスや蒸気が内部に侵入した際に起こる可能性のある内部爆発に耐えうるよう設計された電気機器の特殊な防爆設計です。

この構造は、内部で発生した爆発が機器を損傷させることなく、また、機器の接合部や開口部から外部への可燃性ガスや蒸気の着火を防ぐことを目的としています。着火源となる電気機器を特別に設計された容器で包み込むことにより防爆対策を施すため、設置が容易であり、特に小型や中型の電気機器に適しており、他の防爆設計と組み合わせることも可能です。

しかし、この種の防爆構造は、容器自体に高い強度が求められるため、機器の全体的な重量が増加するという欠点があります。さらに、この設計は爆発を防ぐのではなく、内部での爆発を許容し、その結果として機器内部の部品が損傷するリスクを受け入れることになりますが、その爆発が外部に影響を及ぼさないようにすることが主な目的です。

 

1-2油入防爆構造 (o)

油入防爆構造(記号 “o”)は、電気機器の火花やアークが外部の爆発性環境に引火するリスクを最小限に抑えるために設計された防爆方式です。

この方式では、電気機器の火花を発生させる部分やアークを生じさせる部分を油で満たされた容器内に収めます。油は、火花やアークによって生じる熱を吸収し、それが外部の爆発性ガスや蒸気に到達することを物理的に阻止します。この油層によって、電気的な火花や高温が直接爆発性大気と接触するのを避けることができ、安全性が大幅に向上します。

しかしデメリットとして、油入防爆構造を持つ機器のメンテナンスには特別な注意が必要で、定期的に油の状態をチェックし、必要に応じて交換することが推奨されます。

油入防爆構造は、特に火花やアークが発生しやすい電気機器に適用されます。これには、スイッチリレー接触器などが含まれ、これらの機器が可燃性ガスや蒸気が存在する環境で安全に使用できるようにします。油は、その絶縁特性により電気部品間の誤った電気的接触を防ぎ、また、機器内部の冷却効果も提供します。

 

1-3内圧防爆構造 (f)

内圧防爆構造(記号 “f”)は、電気機器内部に保護気体(通常は清浄な空気や不活性ガス)を圧入し、その圧力を外部の圧力よりも高く保持することで、外部からの爆発性ガスの侵入を防ぐ防爆方式です。

この構造は、特に大型の電気機器や制御盤など、内部空間が広い機器に適用されます。

保護気体としては、空気の他に窒素やアルゴンなどの不活性ガスが使用されることもあります。これらのガスは、電気機器内部での化学反応を抑制し、火花やアークによる爆発リスクを最小限に抑える効果があります。

 

1-4安全増防爆構造 (e)

安全増防爆構造(記号 “e”)は、電気機器が正常時および特定の異常時にも、火花や高温部を生じさせないように設計された防爆方式です。この構造は、電気機器内部での電気火花や高温が発生する可能性がある部分に対して、追加の保護措置を施し、安全性を高めることを目的としています。

安全増防爆構造は、特に電気スイッチ、接触器、回路ブレーカーなど、正常運転中に電気的な接触が頻繁に行われる機器に適用されます。

この構造の主な特徴は、機器が異常な状態になった場合でも、内部で発生する火花や高温が外部の爆発性大気に引火するリスクを最小限に抑えることができる点にあります。これは、機器の設計において、絶縁性能の向上、接触部の特殊な処理、温度上昇を抑制するための措置など、さまざまな技術的な工夫を施すことによって実現されます。

 

1-5本質安全防爆構造 (ia又はib )

本質安全防爆構造(記号 “ia又はib “)は、電気機器やそのシステムが、正常運転時はもちろんのこと、特定の故障状態においても爆発性大気(可燃性ガスや蒸気)を引火させないように設計された防爆方式です。

この構造の基本原理は、電気回路内で発生可能なエネルギー(電気火花や熱)を、引火可能なレベルよりも常に低く保つことにあります。これにより、装置やシステムが爆発性環境内で安全に使用できるようになります。

本質安全防爆構造は、主に低電力の電気機器や回路に適用されます。例えば、センサー、トランスミッター、通信機器などがこれに該当します。この方式では、電流や電圧を制限する特別な設計手法が用いられ、回路内でのエネルギーが引火源となる可能性を最小限に抑えます。

本質安全防爆構造の設計には、特定のコンポーネントの選定、回路設計の最適化、適切な安全バリアの使用など、厳格な基準が適用されます。これらの措置により、機器やシステムが故障した場合でも、爆発性大気に対して安全であることが保証されます。

この防爆方式の大きな利点は、追加の保護手段や重い防爆ケーシングを必要とせずに、爆発性環境での安全な使用が可能であることです。これにより、機器の設計が簡素化され、コストの削減や効率の向上が図られます。

 

1-6特殊防爆構造 (s)

特殊防爆構造(記号 “s”)は、標準的な防爆構造のカテゴリーには含まれないが、特定の条件下爆発性環境における安全性を確保するために設計された電気機器の防爆方式です。

この構造は、「耐圧防爆構造」「油入防爆構造」「内圧防爆構造」「安全増防爆構造」「本質安全防爆構造」以外の構造で、独自の設計や技術を用いて、可燃性ガスや蒸気といった爆発性大気が存在する場所で使用される電気機器が、内部または外部の火花や高温によって引火するリスクを最小限に抑えます。

特殊防爆構造の利点は、非標準的な環境や特殊な要求に対応できる柔軟性にあります。これにより、従来の防爆構造では対応が難しい特定の産業プロセスや環境条件下でも、電気機器を安全に使用することが可能になります。しかし、その特殊性から、設計、製造、およびメンテナンスにおいて高度な専門知識が必要とされ、標準的な防爆構造よりもコストが高くなる可能性があります。

 

1-7非点火防爆構造 (n)

非点火防爆構造(記号 “n”)は、正常運転中および特定の異常状態下でも、周囲の可燃性物質が存在する雰囲気を発火させる能力のない電気機器に適用される防爆方式です。

この構造は、主に第2類危険箇所(ゾーン2)で使用され、爆発性大気がたまにしか存在しない、または短時間しか存在しない場所での使用が想定されています。非点火防爆構造は、「簡易防爆」とも呼ばれ、標準的な防爆構造よりも軽量でコスト効率の良い解決策を提供します。

この防爆方式の特徴は、機器が正常に機能している間はもちろん、特定の故障が発生した場合でも、内部から火花や高温が発生しても、それが外部の爆発性大気を点火させることがないように設計されている点にあります。これは、電気機器内の電気的な接続や部品が適切に絶縁され、火花を発生させる可能性が極めて低いことを意味します。

 

1-8樹脂充填防爆構造 (m)

樹脂充填防爆構造の主な特徴は、樹脂が電気部品を絶縁し、保護すると同時に、発火源となる可能性のある部分を物理的に隔離する点にあります。使用される樹脂は、高い絶縁性能を持ち、熱や化学的な影響に対しても安定している必要があります。

この方式は、特に小型の電子機器やセンサー、回路基板などに適用されます。

樹脂充填防爆構造を持つ機器の製造プロセスでは、電気部品や回路が樹脂で完全に覆われるように、精密な充填技術が用いられます。樹脂は、固化する前に流動性があり、電気部品の隙間や細部にまで浸透し、固化後は硬い保護層を形成します。この保護層は、機械的な強度も提供し、部品を物理的な損傷からも守ります。

 

 

2.防爆電気機器のグループ

防爆電気機器のグループは、その機器が使用される場所の特定の爆発性環境(ガスや塵)に対する適合性を示します。
これらのグループ分けは、機器が安全に機能するために対応しなければならない、特定の種類の可燃性ガス、蒸気、または塵の特性に基づいています。

防爆記号で言うところの「Ex ib llC T4 Gb」の「llC」に当たる部分になります。

グループ 説明
IIA このグループの機器は、プロパン、ブタンなどの炭化水素ガスや蒸気に対して適しています。これらのガスは比較的低い爆発圧力を持ち、一般的な工業施設や石油化学工場で見られます。
IIB IIBグループの機器は、エチレン、ジエチルエーテルなどの爆発圧力がやや高いガスや蒸気に適しています。これらは特定の化学工業施設や特殊な環境での使用に適合します。
IIC 最も厳しい要求を満たすこのグループの機器は、水素、アセチレンなどの非常に高い爆発圧力を持つガスや蒸気に対して適しています。これらのガスは最も危険とされ、特に高い安全基準が求められる環境で使用されます。

 

3.防爆電気機器の温度等級

温度計

防爆電気機器の温度等級は、機器の表面温度が特定の最大値を超えないようにすることで、可燃性ガスや蒸気、塵が存在する環境での使用時に、それらの物質を点火させるリスクを最小限に抑えるための分類です。この温度等級は、機器が発生させ得る最大表面温度に基づいており、特定の環境で使用される際に安全を確保するための重要な指標となります。

防爆記号で言うところの「Ex ib llC T4 Gb」の「T4」に当たる部分になります。

温度等級 最大表面温度
T1 450℃
T2 300℃
T3 200℃
T4 135℃
T5 100℃
T6 85℃

 

4.防爆電気機器の機器保護レベル

保護イメージ画像

防爆電気機器の機器保護レベル(Equipment Protection Level, EPL)は、その機器がどの程度の安全性を提供するかを示す国際基準です。特にガスの爆発危険場所で使用される機器に適用されるEPLは、Ga、Gb、Gcの3つのレベルに分けられます。

防爆記号で言うところの「Ex ib llC T4 Gb」の「Gb」に当たる部分になります。

EPL 説明
Ga このレベルの機器は「非常に高い」保護レベルを提供し、連続的、頻繁または長期間にわたる爆発性ガス環境での使用に適しています。Gaレベルの機器は、最も厳しい安全要求を満たし、最も危険な条件下でも爆発のリスクを最小限に抑えるよう設計されています。
Gb Gbレベルの機器は「高い」保護レベルを提供し、通常の運用条件下での爆発性ガス環境での使用に適しています。このレベルの機器は、予期しない機器の故障や異常な条件が発生した場合にも、安全を確保するための適切な保護を提供します。
Gc Gcレベルの機器は「改善された」保護レベルを提供し、爆発性ガス環境での使用において、比較的低いリスク条件下での安全性を確保します。Gcレベルは、正常な運用条件下での安全性を確保するために設計されており、一般的な保護要求に対応します。

 


まとめ

今回は防爆記号のそれぞれの数値の見方と、防爆構造の種類について詳しく解説しました。

それぞれ防爆の性能を細かく分類することで、より安全に正しい用途で使用することが出来ます。

記事の最初に紹介した「Ex ib llC T4 Gb」の場合、ib本質安全防爆構造で、llC水素、アセチレンなどの非常に高い爆発圧力を持つガスや蒸気に対して適しており、T4最大表面温度は135℃まで対応可能。
また、Gb通常の運用条件下での爆発性ガス環境での使用に適していることが分かります。

このようにプロにお任せする前から自分たちに合った防爆無線機を選ぶことができます。

もちろん無線機選びは、プロの判断にお任せするのが間違いありませんが、なぜこれを選んでくれたのか、本当に自分たちに合っているのかを理解するだけでも、安心感という面では大きく違うのではないでしょうか?

 

防爆構造の種類

防爆構造の種類 記号 特徴
耐圧防爆構造 d 容器内の爆発を容器自体が耐えうるよう設計されており、外部への影響を防ぐ。
油入防爆構造 o 電気部品を油中に収めることで、火花やアークが外部の爆発性ガスに引火することを防ぐ。
内圧防爆構造 f 容器内を保護気体で加圧し、外部からの爆発性ガスの侵入を防ぐ構造。
安全増防爆構造 e 電気機器が正常時及び異常時にも火花や高温を発生させないように、安全性を高めた構造。
本質安全防爆構造 ia又はib 電気回路が特定の故障状態でも爆発性ガスに引火しないように設計された構造。
特殊防爆構造 s 標準的な防爆構造に当てはまらない特別な設計や材料を使用して、引火リスクを排除した構造。
非点火防爆構造 n 正常運転中及び特定の異常状態下でも、周囲の可燃性物質を発火させない電気機器に適用される構造。
樹脂充填防爆構造 m 電気部品を樹脂で囲むことで、火花や高温が外部に伝わるのを防ぐ構造。

防爆電気機器のグループ

グループ 説明
IIA このグループの機器は、プロパン、ブタンなどの炭化水素ガスや蒸気に対して適しています。これらのガスは比較的低い爆発圧力を持ち、一般的な工業施設や石油化学工場で見られます。
IIB IIBグループの機器は、エチレン、ジエチルエーテルなどの爆発圧力がやや高いガスや蒸気に適しています。これらは特定の化学工業施設や特殊な環境での使用に適合します。
IIC 最も厳しい要求を満たすこのグループの機器は、水素、アセチレンなどの非常に高い爆発圧力を持つガスや蒸気に対して適しています。これらのガスは最も危険とされ、特に高い安全基準が求められる環境で使用されます。

防爆電気機器の温度等級

温度等級 最大表面温度
T1 450℃
T2 300℃
T3 200℃
T4 135℃
T5 100℃
T6 85℃

防爆電気機器の機器保護レベル

EPL 説明
Ga このレベルの機器は「非常に高い」保護レベルを提供し、連続的、頻繁または長期間にわたる爆発性ガス環境での使用に適しています。Gaレベルの機器は、最も厳しい安全要求を満たし、最も危険な条件下でも爆発のリスクを最小限に抑えるよう設計されています。
Gb Gbレベルの機器は「高い」保護レベルを提供し、通常の運用条件下での爆発性ガス環境での使用に適しています。このレベルの機器は、予期しない機器の故障や異常な条件が発生した場合にも、安全を確保するための適切な保護を提供します。
Gc Gcレベルの機器は「改善された」保護レベルを提供し、爆発性ガス環境での使用において、比較的低いリスク条件下での安全性を確保します。Gcレベルは、正常な運用条件下での安全性を確保するために設計されており、一般的な保護要求に対応します。


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